最近、美容雑誌や広告でときどき目にする「エモリエント」というワード。
肌を保湿してくれそうなイメージがありますが、実際はどのような意味を持っているのでしょうか。
実はよくわからない、という方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、そんな「エモリエント」という言葉の意味や役割について、詳しく解説。
「肌を保湿する」とはどういうことなのかを、学んでいきたいと思います。
- エモリエントって、どういう意味?
- エモリエント剤にはどんな種類がある?
- エモリエント剤には、どんな効果がある?
- モイスチャーとエモリエントは、どう違う?
- エモリエント剤は本当に必要?
- エモリエント効果を上げるにはどうしたらいい?
このような疑問をお持ちの方は、ぜひ最後までお読みくださいね。
1.エモリエントとは
エモリエント(emollient)という言葉は、「柔らかい」という意味を持ちます。
化粧品で使われるエモリエント効果とは、皮膚の表面を閉塞することで、水分蒸散を抑えてうるおいを保ち、皮膚を柔らかくすること。
そもそも私たちの肌にある「皮脂」が担っている役割で、油分が配合された製品に期待できる効果です。
2.皮膚の構造と3大保湿因子
エモリエント効果について詳しく解説する前に、私たちの皮膚の構造と保湿因子についてお話をさせてください。
2-1.皮膚の構造
私たちの皮膚は、
- 表皮
- 真皮
- 皮下組織
の3つの層に分かれています。
最も外側にある表皮。そのなかでも、一番上にあるのが角質層です。
角質層はわずか0.02mmですが、ここには水分を保ち、外的刺激から内部を守る「バリア機能」が備わっています。
2-2.3大保湿因子
角質層には、肌のうるおいを保つ3つの要素があります。
・天然保湿因子(NMF)
レンガ状に積み重なっている角質細胞の中にあるのが天然保湿因子(NMF)。
水をしっかりつかんで、角質層内に保持します。
・セラミド
セラミドは、角質細胞の間を埋めている細胞間脂質の主成分。
水分を挟み込んで、うるおいをキープします。
・皮脂膜
皮脂膜は、角質層の上に膜を張って、水分の蒸発を防いでいます。
本来エモリエント効果を発揮しているのが、この皮脂膜。
皮脂によってコーティングされた肌は、水分が蒸発しにくく、柔軟に保たれています。
こうして、3つの保湿因子が正常に働くことで、肌はうるおいに満たされます。
しかし、これらの保湿因子は、加齢などいくつかの原因によって減少。
また空気の乾燥など外的要因で肌が乾燥することもあります。
そのため、私たちは化粧品を使って、肌を「保湿」するのです。
3.保湿には、2種類ある
「保湿」とひとえにいっても、実は2つの目的があります。
ひとつは、角質の水分量を上げて、うるおいに満ちた状態をキープすること。
これをモイスチャー効果といいます。
グリセリンやBGなど、ヒューメクタントと呼ばれる水分を吸着する水溶性の保湿成分に期待される効果です。
そしてもうひとつは、肌の表面に膜を張って、水分を蒸発させないようにすること。
これが、今回取り上げている「エモリエント効果」です。
2つはそれぞれ違う目的があるため、肌のうるおいを保つためには、どちらも欠かせません。
4.エモリエントとは?
では、エモリエント効果とは、どのようなことなのでしょうか。
深掘りしていきましょう。
4-1.エモリエント効果がある化粧品は?
エモリエント効果がある化粧品は、次のように油分が配合されたアイテムです。
- 乳液
- クリーム
- オイル
など
化粧水だけでスキンケアを終わらせてしまうと、せっかく与えた水分がどんどん蒸発してしまいます。
そこで乳液やクリームなどを塗布することで、油分の膜が蓋となり水分の蒸発を抑制。
角質層のうるおいがキープされて、皮膚が柔軟になるのです。
4-2.主なエモリエント剤
エモリエント効果がある成分を、エモリエント剤といいます。
エモリエント剤とひとえにいっても、多くの種類があります。
ここで、機能を次の3つに分類して、ご紹介していきましょう。
- 耐水性……水となじみにくく、高い閉塞性で水分蒸発を抑える成分
- 水分を抱え込む力……高い抱水性を併せ持つ成分
- 肌のバリア機能改善……角層が持つバリア機能を改善させる効果をもたらす成分
5.エモリエント効果を引き出すポイント
乳液やクリーム、オイルなどを使って、エモリエント効果を最大に高めるためには、どのようなことを意識したらよいのでしょうか。そのポイントをご紹介していきます。
5-1. 汚れを落とす
まず、スキンケアを行う前には、しっかり肌の汚れを落としておきましょう。
肌に汚れが残ったままだと、スキンケア製品の浸透が悪くなります。
メイクをしている場合は、クレンジングをして、その後、洗顔料で残った肌の汚れを落としておきます。
・朝も洗顔料を
朝は水洗いだけという方もいらっしゃるかもしれませんが、寝ている間に分泌した皮脂や、ほこりなどの汚れが付着しています。洗顔料を使って、洗うことをおすすめします。
・摩擦レスで、丁寧な洗顔を
顔を洗う際は、ゴシゴシ洗いはNG。
摩擦が起きて、肌が乾燥してしまいます。
しっかり泡立てて、指と肌が触れないように、泡のクッションでモフモフと押し洗いしましょう。
・洗いすぎに注意
顔を洗うのは1日2回まで。
洗いすぎると、必要な皮脂まで洗い流して、乾燥の原因に。
また洗う時間も、30秒程度で速やかに洗い流しましょう。
その際、皮脂の多いTゾーンから洗うと、乾燥を防ぐことができます。
・不要な角質が溜まっているときは酵素洗顔を
不要な角質が溜まって、肌がごわついているときには、酵素洗顔もおすすめ。
酵素が古い角質を分解して、柔らかい肌になることで、スキンケア製品が浸透しやすくなります。
ただし、多くの酵素洗顔は、刺激が強いため頻繁に使用することはできません。
週1のスペシャルケアとして取り入れることをおすすめします。
まれに毎日使えるマイルドな酵素洗顔もあるので、チェックしてみてくださいね。
5-2. ブースターで肌を柔らかく
肌が乾燥してごわついているときなどは、化粧水がなかなか浸透していかないこともありますよね。
そんなときに効果を発揮するのが「ブースター」です。
ブースターは、肌をやわらかくして、化粧水などその後のスキンケア製品の浸透をアップさせてくれるもの。マストアイテムではありませんが、スキンケア効果を上げたい方にはおすすめです。
乳液タイプやオイルタイプなど、種類もさまざま。
選ぶ際は、肌なじみのいいものを選びましょう。
たとえば、天然のヒト型セラミド配合のブースター。
ヒト型セラミドは、もともと私たちの肌にあるセラミドと酷似しているため、親和性が高く保湿力も高いのでおすすめです。
5-3. 化粧水で水分量を上げる
次に、化粧水を塗布していきます。
ここでの目的は、角質の水分量を上げること。
たっぷり塗布して、乾いた肌に水分を与えてあげましょう。
化粧水でも、美白やエイジングケア、ニキビ対策など、訴求性分によって期待できる効果が違います。さっぱりしたものから、とろみの強いものまで、テクスチャーの違いも。
どのような化粧品でも、メーカーが推奨している適量をしっかり使うことが大切です。
少なすぎると、肌の乾燥を招きますので、たっぷり肌に染み込ませましょう。
スキンケアの正しい順番については、こちらの記事に詳しく解説しておりますので、併せてチェックしてみてくださいね。
5-4.美容液で肌悩みに本格アプローチ
シミやしわ、ニキビなど、深刻な肌悩みを解決したい場合は、美容液がおすすめです。
配合されている訴求成分によって得られる効果もさまざま。
ピンポイントでアプローチしてくれるため、効果が実感しやすいアイテムです。
なかには、複数の効果が期待できるマルチな美容液もあります。
美容液の多くは、併用することも可能。
その際は、水っぽいテクスチャーのものから順に塗布するようにしましょう。
5-5.乳液、クリーム、オイルでエモリエント効果を得る
最後に、乳液、クリーム、オイルなど、エモリエント効果がある化粧品で仕上げをします。
スキンケアの最後に行うことで、水分の蒸発を防ぎ、肌を柔軟に保つことができます。
・適量を使う
乳液やクリームも、推奨された量を使用しないと、十分な効果が得られません。
パッケージなどを確認して、メーカー推奨の量を使用しましょう。
・Tゾーンは少なめに
しかし、推奨の量をまんべんなく塗るとべたつくこともありますよね。
そのようなときは、パーツごとに塗る量を調整してみてください。
乾燥しやすい頬や口周りはしっかりと。
そして、もともと皮脂の多い部分は、少量で大丈夫です。
頬に塗って、手に余った油分をTゾーンに乗せるようなイメージで行いましょう。
とくにオイリー肌の方は、Tゾーンが油分過多にならないように気をつけましょう。
・オイリー肌の人や、皮脂の多い時期は、べたつきに注意
オイリー肌の方や、皮脂の多い夏場などは、べたつきの少ない製品を選ぶこと大切です。
モイスチャーバランスに着目した乳液や、べたつきが少ないセラミド配合の製品など、重すぎないものを選びましょう。
6.まとめ
今回は、「エモリエント」という言葉の意味と共に、その役割について解説してまいりました。
エモリエントとは、水分蒸散を抑えてうるおいを保ち、皮膚を柔らかくすること。
私たちの肌では皮脂が担っている役割で、乳液やクリーム、オイルなどに期待できる効果です。
モイスチャー効果とは違う保湿目的があるため、どちらも必要です。
エモリエント効果を上げるためには、正しいスキンケアを取り入れることも大切。
肌に合ったアイテムを適切に使うことで、うるおいに満ちた柔らかい肌を目指しましょう。