
日中、強い眠気に襲われて仕事に集中できない…。
夜はちゃんと寝ているはずなのに、なぜか日中あくびが止まらない…。
そんな経験はありませんか。
もしかしたら、そのどうしようもない眠気は、単なる疲れや寝不足のせいではないかもしれません。
40代、50代の女性に訪れる「更年期」が原因となっている可能性があるのです。
でも、安心してください。
更年期の眠気は、女性ホルモンの変化によって起こる、科学的な根拠のある体のサインです。
この記事では、なぜ更年期に眠くなるのか、その詳しいメカニズムから、見逃したくない他の病気の可能性、そして今日からすぐに始められるセルフケア、婦人科で行う専門的な治療法まで、あなたの疑問にまるっとお答えします。
この記事を読み終える頃には、つらい眠気と上手に付き合っていくためのヒントがきっと見つかるはずです。
Contents
更年期に「寝ても寝ても眠い」4つの主な原因|ホルモンと脳の密接な関係

「ホルモンバランスの乱れ」という言葉はよく聞くけれど、具体的に体の中で何が起こっているのでしょうか。
実は、更年期の眠気の裏には、女性ホルモンと脳の働きとの間に、とても深い関わりがあるのです。
ここでは、眠気を引き起こす4つの主な原因を、一つひとつ丁寧に見ていきましょう。
あなたの体の中で起きている変化を知ることで、漠然とした不安が少し和らぐかもしれません。
原因1:エストロゲン減少による「セロトニン」「メラトニン」の不足

更年期になると、女性ホルモンの一つである「エストロゲン」の分泌が急激に減少します。
実はこのエストロゲン、私たちの心の安定に関わる「セロトニン」という脳内物質を作る手助けをしています。
セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれていて、気分を前向きにしたり、リラックスさせたりする働きがあるんですよ。
さらに、セロトニンは夜になると、「メラトニン」という自然な眠りを誘うホルモンに姿を変えます。
つまり、エストロゲンが減ると、セロトニンが作られにくくなり、その結果メラトニンも不足してしまうのです。
この連鎖によって、夜はなかなか寝付けなかったり、眠りが浅くなったりしてしまいます。
夜に質の良い睡眠がとれないため、日中に強い眠気を感じてしまう、というわけなのです。
原因2:自律神経の乱れによる夜間の覚醒(ホットフラッシュ・動悸)

エストロゲンは、体温調節や心臓の動きなどをコントロールしている「自律神経」のバランスを保つ役割も担っています。
そのため、エストロゲンが減少すると、自律神経の司令塔が混乱しやすくなります。
その代表的な症状が、急に顔がカッと熱くなる「ホットフラッシュ」や、大量の汗、突然の動悸です。
これらの症状が、もし夜寝ている間に起こったらどうでしょうか。
突然のほてりや汗、ドキドキする胸の鼓動で、はっと目が覚めてしまいますよね。
こうして夜中に何度も睡眠が中断されると、ぐっすり眠ることができず、睡眠の質はどんどん低下してしまいます。
その結果、日中の活動時間帯に、強い眠気やだるさを感じることになるのです。
原因3:プロゲステロン減少による「鎮静作用」の低下

更年期には、もう一つの女性ホルモン「プロゲステロン」も減少します。
プロゲステロンには、脳の興奮を鎮めて心と体をリラックスさせる働きがあります。
これは、「GABA」という脳内のリラックス物質の働きを助けることで、まるで天然の睡眠薬のような穏やかな作用をもたらしてくれるのです。
ところが、更年期でプロゲステロンが減ってしまうと、この鎮静作用が弱まってしまいます。
そのため、心が落ち着きにくく、なかなか寝付けなくなったり、眠りが浅くなって夜中に何度も目が覚めたりすることが増えるのです。
これもまた、日中の眠気を引き起こす大きな原因となります。
原因4:加齢にともなう睡眠構造の変化

更年期の眠気は、ホルモンの変化だけでなく、年齢を重ねることによる自然な体の変化も関係しています。
実は、私たちは年齢とともに、睡眠のパターンが少しずつ変わっていきます。
若い頃と比べて、ぐっすりと深く眠れる「ノンレム睡眠」の時間が短くなり、浅い眠りの割合が増える傾向があるのです。
また、夜中に目が覚める回数が増えたり、朝早くに目が覚めてしまったりすることも多くなります。
これは、特別なことではなく、誰にでも起こりうる自然な変化です。
「最近、前みたいにぐっすり眠れないな」と感じるのは、あなただけではないんですよ。
更年期のホルモンバランスの変化に、こうした加齢による睡眠の変化が重なることで、日中の眠気がさらに強く感じられることがあるのです。
その眠気、本当に更年期だけ?見逃したくない他の病気のサイン

「この眠気は更年期のせい」と思っていても、実は別の病気が隠れている可能性もゼロではありません。
更年期と症状が似ているため、見過ごされやすい病気もいくつかあります。
ここでは、セルフチェックのポイントとあわせて、知っておきたい病気についてご紹介します。
もし当てはまることがあれば、一度専門の医療機関に相談してみることをおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群(SAS):いびきや呼吸停止の指摘はないか

睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が何度も止まったり、浅くなったりする病気です。
呼吸が止まることで脳が酸欠状態になり、それを補うために何度も目が覚めてしまうため、深い眠りが得られません。
実は、女性ホルモンのプロゲステロンには気道を広げる働きがあるため、これが減少する閉経後の女性は発症リスクが高まると言われています。
大きな「いびき」や、寝ている間に「呼吸が止まっていたよ」と家族に指摘されたことはありませんか。
また、朝起きた時に頭が痛かったり、日中に耐えがたいほどの眠気を感じたりするのも特徴的なサインです。
甲状腺機能低下症:強い倦怠感や冷え、むくみを伴う場合

甲状腺は、体の新陳代謝を活発にするホルモンを分泌する器官です。
この甲状腺の働きが低下すると、体全体のエネルギー消費が少なくなり、強い眠気や倦怠感、無気力といった症状が現れます。
更年期と症状がとても似ていますが、眠気に加えて「異常な寒がり」「肌の乾燥」「体重増加」「むくみ」などが目立つ場合は、甲状腺の病気を疑ってみる必要があるかもしれません。
この病気は簡単な血液検査で診断することができます。
鉄欠乏性貧血:めまいや息切れ、顔色が悪くないか

更年期は、月経周期が乱れ、不正出血や月経過多が起こりやすい時期です。
そのため、体内の鉄分が不足し、貧血(鉄欠乏性貧血)になる女性が少なくありません。
貧血になると、血液が全身に酸素を運ぶ能力が低下するため、脳が酸欠状態になりやすくなります。
その結果、眠気やだるさ、集中力の低下といった症状が現れるのです。
めまいや立ちくらみ、少し動いただけでの息切れ、顔色が悪い、爪が白っぽくスプーンのように反り返る、といったサインがあれば、貧血の可能性が考えられます。
その他(むずむず脚症候群・うつ病など)

ほかにも、夜になると脚がむずむずしたり、虫が這うような不快感で眠れなくなる「むずむず脚症候群」や、気分の落ち込みとともに過剰な眠気(過眠)が現れる「うつ病」なども、日中の眠気の原因となることがあります。
これらの病気は、睡眠の質を著しく低下させ、日常生活に大きな影響を与えます。
もし、眠気以外にも気になる症状があれば、一人で抱え込まずに、かかりつけ医や専門の医療機関に相談してみてくださいね。
【セルフケア編】今日からできる!つらい眠気を乗り切る5つの生活習慣

専門的な治療も大切ですが、まずは毎日の生活の中でできることから始めてみませんか。
ここでは、睡眠の質を高め、日中のつらい眠気を和らげるための、今日からすぐに実践できる5つのセルフケアをご紹介します。
ちょっとした工夫で、心と体が少し楽になるかもしれません。
1. 朝日を浴びて体内時計をリセットする

私たちの体には、約24時間周期でリズムを刻む「体内時計」が備わっています。
この時計を毎朝リセットしてくれるのが「太陽の光」です。
朝の光を浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が止まり、心と体を活動モードに切り替えるセロトニンの生成が促されます。
毎朝起きたら、まずはカーテンを開けて、15分ほど自然の光を浴びる習慣をつけてみましょう。
ベランダで深呼吸をしたり、軽い散歩に出かけたりするのも良いですね。
これを続けることで、夜は自然と眠くなり、朝はすっきりと目覚められるリズムが整っていきます。
2. 睡眠の質を高める食事の工夫(トリプトファン・GABA)

毎日の食事も、睡眠の質に大きく関わっています。
特に意識して摂りたいのが、セロトニンの材料となる「トリプトファン」です。
トリプトファンは、豆腐や納豆などの大豆製品、チーズや牛乳などの乳製品、そしてバナナなどに多く含まれています。
夕食にこれらの食材をプラスしてみるのがおすすめです。
また、リラックス効果のある「GABA」を多く含む、トマトやカボチャ、キムチなどの発酵食品も積極的に取り入れたいですね。
一方で、血糖値を急激に上げる甘いものや炭水化物の摂りすぎは、食後の強い眠気の原因になるので注意しましょう。
3. 日中に軽い運動を取り入れて適度な疲労感を

日中に体を動かすことは、夜の快眠への近道です。
ウォーキングやヨガ、軽いストレッチなどの有酸素運動は、血行を促進し、乱れがちな自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。
運動によって得られる心地よい疲労感は、夜の寝つきをスムーズにし、深い睡眠をもたらしてくれます。
大切なのは、激しい運動をする必要はないということです。
エレベーターを階段に変えてみる、一駅手前で降りて歩いてみるなど、日常生活の中で少し活動量を増やす意識を持つだけでも効果がありますよ。
4. 夜の過ごし方を見直す(入浴・スマホ・カフェイン)

質の良い睡眠のためには、寝る前の過ごし方がとても重要です。
まず、就寝の1~2時間前に、38~40℃くらいのぬるめのお湯にゆっくり浸かるのがおすすめです。
一度上がった体の深部体温が自然に下がっていく過程で、スムーズな入眠が促されます。
また、スマートフォンやパソコンの画面から出るブルーライトは、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制してしまいます。
寝る前1時間は画面を見るのをやめて、読書や音楽、穏やかな香りのアロマなどでリラックスする時間に切り替えましょう。
コーヒーや緑茶に含まれるカフェインも、覚醒作用があるため午後3時以降は控えるのが賢明です。
5. どうしても眠い時は「15分の仮眠」を効果的に

セルフケアを試しても、日中にどうしても耐えられない眠気に襲われることもありますよね。
そんな時は、我慢せずに「上手な仮眠」を取り入れましょう。
ポイントは、「午後3時までに」「15~20分程度」の短い時間にすることです。
30分以上眠ってしまうと、深い眠りに入ってしまい、起きた時にかえって頭がぼーっとしてしまったり、夜の睡眠に悪影響が出たりします。
デスクで座ったまま、目を閉じて休むだけでも脳の疲労はかなり回復します。
午後の仕事の効率アップにもつながりますよ。
【専門治療編】セルフケアで改善しないなら婦人科へ。主な治療法を徹底比較

生活習慣を見直しても、つらい眠気がなかなか改善しない…。
そんな時は、我慢せずに専門家の力を借りることも大切な選択肢です。
更年期の症状は、婦人科で適切な治療を受けることで、大きく和らげることができます。
ここでは、代表的な治療法である「ホルモン補充療法(HRT)」と「漢方薬」について、それぞれの特徴を比較しながらご紹介します。
自分にはどんな治療法が合うのか、医師に相談する際の参考にしてみてください。
ホルモン補充療法(HRT):減少したホルモンを補う根本治療
ホルモン補充療法(HRT)は、その名の通り、更年期に減少してしまった女性ホルモン(エストロゲン)を、お薬で補う治療法です。
足りなくなったものを直接補うため、眠気の根本原因であるホルモンバランスの乱れや自律神経の不調に直接アプローチすることができます。
HRTは、眠気や不眠だけでなく、ホットフラッシュや発汗、気分の落ち込み、関節痛など、さまざまな更年期症状に高い効果が期待できるのが大きなメリットです。
一方で、ごくまれに血栓症や乳がんなどのリスクが指摘されることもあり、定期的な検診が必要となります。
治療を始める前には、医師としっかり相談し、メリットとデメリットを理解した上で、自分に合った方法や薬の種類を選ぶことが大切です。
漢方薬:体全体のバランスを整え、複合的な不調を改善

漢方薬は、特定のホルモンを補うのではなく、一人ひとりの体質(「証」)を見極め、「気・血・水」といった体全体のバランスを整えることで、不調を改善していく治療法です。
眠気だけでなく、イライラや不安感、冷え、疲労感など、人によって異なるさまざまな症状に、複合的にアプローチできるのが特徴です。
更年期の不調によく使われる漢方薬には、イライラやほてりを鎮める「加味逍遙散(かみしょうようさん)」、冷えや貧血傾向のある方向けの「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、のぼせや肩こりに効果的な「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」などがあります。
HRTが体質的に合わない方や、HRTと併用してより効果を高めたい方にも選ばれています。
【比較表】あなたに合うのは?HRT・漢方・サプリメントの違い
| 治療法 | 作用 | メリット | デメリット・注意点 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| ホルモン補充療法(HRT) | 減少したエストロゲンを直接補充する | 根本的な原因に直接作用し、効果が比較的早く現れやすい。様々な更年期症状に有効。 | 定期的な検診が必要。血栓症や乳がんなどのリスクについて医師との相談が不可欠。 | ホットフラッシュなど複数の症状が強く、早く効果を実感したい方。 |
| 漢方薬 | 「気・血・水」のバランスを整え、体質から改善する | 眠気、冷え、イライラなど複合的な症状にアプローチできる。副作用が比較的少ない。 | 効果が出るまでに時間がかかることがある。体質(証)に合った処方が必要。 | HRTが使えない方。冷えや疲労感など、複数の不調を抱えている方。 |
| エクオールサプリメント | 大豆イソフラボン由来の成分で、エストロゲンに似た働きをする | 手軽に始められる。副作用の心配が少ない。 | 効果はHRTより穏やか。体内でエクオールを作れるかどうかで効果に個人差がある。 | 症状が比較的軽く、まずは手軽なものから試してみたい方。 |
まとめ:更年期の眠気は一人で悩まず、専門家と上手に乗り越えよう

ここまで、更年期に「寝ても寝ても眠い」原因と、その対策について詳しく見てきました。
最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 更年期の眠気は、女性ホルモンの減少による、脳や自律神経の働きと深く関わっています。
- その眠気の裏には、睡眠時無呼吸症候群や甲状腺の病気など、他の病気が隠れている可能性もあります。
- まずは朝日を浴びたり、食事や運動を見直したりといった、生活習慣の改善から始めてみましょう。
- セルフケアで改善しない場合は、我慢せずに婦人科を受診し、HRTや漢方薬などの専門的な治療を検討することも大切です。
更年期に起こる心と体の変化は、とても個人差が大きく、つらい症状を一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。
でも、その眠気は、あなたの頑張りが足りないせいでは決してないのです。
今は、さまざまな対処法や治療の選択肢があります。
この記事が、あなたが自分自身の体の変化と向き合い、専門家と相談しながら、つらい眠気を上手に乗り越えていくための一助となれば幸いです。
快適な毎日を取り戻すために、ぜひ一歩を踏み出してみてくださいね。
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