化粧品のパッケージや広告に記載されている「パラベンフリー」という言葉。
意味はよくわからなくても、なんだか肌によさそうな印象を受けませんか。
とくにアレルギーを持っていたり、肌が敏感な方は、気になるワードではないでしょうか。
「フリー」という言葉がついていると、「きっと肌に悪いものなんだ」と考えてしまいますが、本当のところ、パラベンは肌に悪いのでしょうか?
今回は、そんな知っているようでよく知らない「パラベン」にクローズアップ。
パラベンはなぜ化粧品に配合されているのか、「防腐剤フリー」とは違うのか、など詳しく解説していきたいと思います。
- パラベンフリーとは何?
- パラベンがダメな理由は?
- パラベンと防腐剤の違いは?
- パラベンの種類が知りたい
- メチルパラベンの肌への影響は?
- パラベン以外にも防腐剤はある?
以上のような疑問をお持ちの方は、ぜひ参考になさってくださいね。
Contents
1.化粧品に防腐剤は必要?
そもそも、化粧品にはなぜ防腐剤が配合されているのでしょうか。
まずはその理由を知っておきましょう。
1-1.化粧品にはカビや微生物のエサになる成分が入っている
多くの化粧品に配合されている、アミノ酸・天然油脂・糖類などの成分。
これらは、カビや微生物のエサになります。
万が一、容器の中に微生物が混入すると、エサを得て繁殖。
化粧品の品質が劣化してしまうのです。
カビや微生物が繁殖して腐敗した化粧品を肌に塗布すれば、かぶれや赤み、ニキビなど、何かしらの肌トラブルを引き起こしてしまう可能性もあります。
1-2.長期保存には必要不可欠
そんな危険にさらされている化粧品。
- 食料よりも長い期間使用される
- 手の雑菌が混入する可能性が高い
以上のことなどから、腐敗するリスクはとても高いのです。
そこで配合されているのが、防腐剤。
防腐剤を配合することで、カビや微生物の繁殖を防ぎ、化粧品の品質が劣化するのを防いでいるのです。
1-3.防腐剤フリーは腐りやすい?
「だったら、防腐剤フリーって書かれている化粧品は、すぐに腐っちゃうの!?」
そんな不安がよぎりますが、心配ありません。
化粧品には「特別に消費期限が記載されていない限り、未開封の状態で3年以上品質を維持する」という基準があります。
また開封後もできるだけ品質を保てるよう、さまざまな工夫がされているのです。
1-4.防腐剤フリーは他の成分を使って品質を保っている
では、防腐剤フリーの化粧品は、どのように品質を保っているのでしょうか?
それは、防腐効果のある別の成分を配合すること。
防腐剤こそ配合されていないものの、その他の成分でカバーしているということになります。
2. 防腐剤の種類
防腐剤とひとえに言っても、次のようにいくつか種類があります。
- パラベン(パラオキシ安息香酸エステル)
- フェノキシエタノール
- 安息香酸塩
- メチルイソチアゾリノン
- イソプロピルメチルフェノール
- DMDMヒダントイン
など
そう、今回ピックアップしているパラベンは、防腐剤のひとつだったんですね。
そのため「パラベンフリー」=「防腐剤フリー」ではありません。
パラベンフリーと記載されている化粧品は、パラベンは入っていないけれど、他の防腐剤は入っている、または防腐効果のあるその他の成分が入っているということです。
肌が敏感な方は、パラベンフリーという言葉で安心するのではなく、他の防腐剤も併せてチェックしましょう。
3. パラベンとは?
では、「パラベン」とは、一体どのような成分なのでしょうか。
掘り下げていきましょう。
3-1.最も代表的な防腐剤
パラベンは、防腐剤のなかでも、最も代表的な成分。
化粧品だけでなく、食品や飲料、医薬品などにも用いられている防腐剤です。
正式名称は、パラオキシ安息香酸エステル。
化粧品の成分表示には、こちらの名前で記載されているので、チェックしてみてくださいね。
3-2.パラベンの種類
パラベンは、いくつかの種類があり、抗菌力の高さに違いがあります。
- ブチルパラベン
- プロピルパラベン
- エチルパラベン
- メチルパラベン
なかでもメチルパラベン(パラオキシ安息香酸のメチルエステル)は、食品にも添加される、比較的安全性の高い防腐剤だと言われています。
単体の抗菌力の高さを比較すると、次のようになります。
ブチルパラベン>プロピルパラベン>エチルパラベン>メチルパラベン
単体で配合されることもありますが、2種類以上を組み合わせて配合されることもあります。
3-3.パラベンはなぜ敬遠されるの?
食品にも使われるパラベン。なぜ、敬遠されているのでしょうか?
1980年、旧厚生省は102種類の化粧品成分についてアレルギーの危険性を認め『表示指定成分』としました。
それに、パラベンが含まれています。
現在では、他の防腐効果のある成分と併用することでパラベンの配合量を減らすなど、技術の向上によって肌トラブルも減っています。
2001年に、化粧品は全成分の表示が義務化されたため、「旧表示指定成分」となりましたが「パラベン=肌に悪いもの」というイメージが定着。パラベンがユーザーやメーカーに敬遠されるようになってしまったようです。
4. パラベンのメリット・デメリット
パラベンには、メリットとデメリットがあります。
それぞれをチェックしていきましょう。
4-1.パラベンのメリット
パラベンのメリットは、次の2つです
・腐敗や変色を防いでくれる
パラベンは、雑菌の繁殖を抑えて、腐敗を防ぎ、品質を保ってくれる効果があります。
・少量でも効果を発揮
パラベンは、少量でも効果を発揮してくれる優秀な防腐剤。
日本の基準では、使用量の上限が1%と定められています。
しかし、市販されている多くの化粧品において、0.1~0.5%という低用量で使用されています。
パラベンを省いて、他の成分で同じ効果を得ようとすると、大量に配合しなければならないこともあるので、一概にパラベンフリーがよいとも言い切れません。
・毒性が低い
また毒性が低いのも、パラベンの魅力のひとつ。
皮膚刺激性、眼刺激性、急性毒性が、ほとんど認められていない安全な成分です。
4-2.パラベンのデメリット
しかし、残念ながらデメリットもあります。
・人によっては刺激を感じる
皮膚刺激性は低い防腐剤ですが、肌が敏感な方は刺激を感じる可能性も否めません。
配合量が多ければ多いほど、皮膚への刺激が高くなります。
・肌にストレスを与える
また、パラベンが肌にストレスを与えることも明らかになっています。
この研究を行ったのは、無添加化粧品で有名なファンケル。化粧品中の防腐剤は皮膚に残り、肌にストレスを与える | 研究開発レポート | 研究開発 | FANCL ファンケル(参照日 2023/5/24)
パラベンのなかでも安全性が高いと言われているメチルパラベンを使用した調査でした。
それによると、メチルパラベンを配合した化粧品を使い続けると、皮膚中にメチルパラベンが残存することがわかったのです。
さらに、皮膚に蓄積されたパラベンは、細胞に次のような影響を与えたことが明らかにされました。
- 細胞の老化によって起こる形態の変化を加速させる
- ヒアルロン酸を合成する酵素の遺伝子発現を低下させる
- 皮膚の老化や角化に関連する物質を増やす
- メラニン産生細胞に与えたところ、メラニンの産生を高める
このように、さまざまな肌ストレスを与える原因になってしまうようです。
5. パラベンは肌荒れやアレルギーを起こす?
では実際、パラベンは肌荒れやアレルギーを起こしてしまうのでしょうか。
それに関して、興味深い論文があります。
金沢大学医薬保健研究域医学系(平成28年度-30年度)の研究結果です。
注目したいのが、石川県の186人乳幼児を対象に行われた調査。
尿中パラベン高濃度の児ではアトピー性皮膚の有症率が有意に高く、パラベン類の使用とアトピー性皮膚炎との因果関係が疑われました
以上のような研究報告がなされています。
安全性が高いと言われ、古くから使われているパラベンですが、少なからずアトピー性皮膚炎への影響はあると考えられる研究結果でした。
6. パラベンとはどう付き合うべき?
このような気になる研究結果も出されていますが、化粧水の品質を保つために、防腐剤は必要不可欠。
なかでも、ポピュラーな防腐剤・パラベンとは、どう付き合っていったらよいのでしょうか?考えていきましょう。
6-1.人によっては刺激が出るので注意
先述したように、パラベンは人によっては刺激が出てしまうこともあります。
とくに肌が敏感な方、過去にパラベン配合の化粧品で肌荒れしてしまった方、アレルギー体質の方などは、使用に注意しましょう。
ちなみに、大手化粧品メーカーの資生堂は、抗菌力の高いブチルパラベンとプロピルパラベンは避け、比較的安全性の高いメチルパラベンとエチルパラベンを低濃度で配合する製品の開発が進められています。
このようにメーカーによってパラベンの取り入れ方が異なると思いますので、気になる方はメーカーに問い合わせるなどして、調べてみてくださいね。
パッチテストを行うことや、ご自身が苦手な成分を特定しておくことも、肌荒れ防止に役立ちます。
6-2.他の防腐剤もチェック
パラベンフリーの化粧品は、他の防腐剤や防腐効果のある成分が配合されています。
さらにそれらの成分は、パラベンと同等の防腐効果を得るために、大量に配合され可能性もあります。
「パラベンフリーだから安心」というわけではないので、他の防腐剤もチェックするようにしましょう。
7.まとめ
今回は、防腐剤の一種「パラベン」について、ピックアップしてきました。
パラベンは、食品にも使われている安全性の高い防腐剤。
少量で効果を発揮するなど、メリットも多くあります。
一方で、人によっては刺激を受けること、アレルギーとの関係が示唆されている点など、気になるデメリットもあります。
また、「パラベンフリー」と記載されていても、他の防腐剤が使われている可能性が高く、「防腐剤フリー」とは異なります。
肌が敏感な方、アレルギー体質の方などは、注意しながら取り入れるようにしましょう。